短歌日記

アパートの硝子に薄き紙の在り冬眠という字傾ぎはじめる

冬眠を告げたる人のくすくすと眠り続ける朝日に扉を叩く

よ〜、よ〜、と頬を抓れば目覚めるのか 全世界に忘れ去られて

目覚めねば男は只の物体の集積である ぞんざいにする

ぞんざいに扱えど熱は与えられ与えられれば答えてしまう

彼方へと口付けるごと口付ける此の世にはない唇のひふ 

唇のかすかに弾む肉なれば身体は此処にあるのだと思ふ

君僅かなまめく昼に背を包みわれは渡りぬ 小川の橋を