短歌日記
差換えてみよう 私の腕と君の腕を 蘭が咲きかけている
眦に渓流のある岩にあしをならべておれば落葉松である
まつの木にあなうらをあてしばらくを岩のうえにて待ちておりたり
母さんの黒い日傘をさしながら水平線をするする渉る
わたしたち吊り橋のうえ列をなしひとつづきなる地雷図となる
爪先をくんと伸ばしてあまいあまいりんごジュースの落ちてゆくさき
透明な指にあたえる抵抗のあまたひろがる森並みに 我
岩の間に平たき小石詰めこめば墳墓をつくる人の吐く息
石を組み石を組するてのひらの眠れば蝶のようにとどまる
臍がまるで櫻のやうだかきわけてかきわけてみる櫻のやうだ
さくらいろのはだ濯ぐときむばたまの川上弘美に臍のあるかな
突き刺してみる。突き刺して、抜いてみる。昼、8月に終わるものある